皆さんはどうやってテレビ番組が制作されているか知っていますか?

テレビ制作大百科では、どんな過程で番組制作されて放送されるのかを、どこよりも細かく徹底解説していきます。

ロケもあり、サブ出しもあり、スタジオ収録もある地上波ゴールデン番組をイメージしたオーソドックスな番組で説明していきます。架空の番組を例にしていき、これを見れば番組制作の流れがマルっと掴めると思います。

【架空番組】
番組名:木曜日の踊る!グルメに吠える会
放送日:4月25日
放送枠:19時〜21時
収録日:4月10日

【企画・定例会議】放送まで残り60日(収録まで40日)

まず最初に企画会議で、放送するネタや企画を決めていきます。定例会議で放送作家や、ディレクターが出したネタ案を見ながら議論し、総合演出が企画を選んでいきます。

大体放送日の2ヶ月くらい前にはネタが決まり、動き出します。

放送日や収録日は決まっているので、ネタや企画を決めるのが遅くなるとロケや編集スケジュールが削られていき、どんどん大変になります。

今回は【春キャンプ特集】をすることに決まったとしましょう。

ネタが決まったら、次は分科会に移ります。

【分科会】放送まで残り58日(収録まで38日)

ネタが決まったらすぐに分科会を行います。

制作会社スタッフと担当作家のみで企画の方向性やネタを練っていく会議です。

【分科会イメージ

ディレクター「キャンプ場で芸人さんとロケしよう」

作家「全国のおすすめキャンプ場も紹介しませんか?」

ディレクター「じゃあスタジオ企画では、自宅で出来るキャンプ飯も作りましょう」

作家「キャスティング案はこんなイメージですかね?」

などより具体的な企画やアイデアを制作会社サイドで固めて、それを総合演出やチーフ作家にチェックしてもらいます。

【総合演出ネタチェック】放送まで残り51日(収録まで31日)

分科会で制作スタッフが考えた企画や方向性で進んでいいのかを、総合演出に決めてもらいます。

ここで方向性が決まればやっと本格的に動き出すことができます。

もし決まらなければ再度分科会に戻り、同じことを繰り返しますが、最初の定例会議である程度決まっていればスムーズにいくことが多いです。

【リサーチ・仕込み】放送まで残り50日(収録まで30日)

ここから一気にADが本格的に動き始めます!ディレクターが求めるロケ地、さらにスタジオネタの情報も合わせてリサーチしていきます。

ディレクターのさまざまな要望をADが一気にリサーチ、仕込みをしていきます。

【リサーチ内容】

・関東近郊の良さそうなキャンプ場

・自宅で出来る簡単キャンプ飯レシピ

・全国のユニークキャンプ場

ADはここから収録日まで休みはほぼ無くなりますが、まだ家には帰れる時期ではあります。

ADはリサーチした内容が不採用ならもう一度調べ直して、もっといい情報を見つけてディレクターに提案し続けないといけないです。

提案してディレクターOKでも、取材許可が取れなければ振り出しに戻ります。ロケ日も決まっており、早くロケ地を見つけて仕込まないとヤバいことになっていきます。

この期間でも常に総合演出の確認は必要になり、制作会社で最終判断はしません。そのためロケ地やネタが確定するまでは、リサーチ・確認・仕込みを常に繰り返します。

【それぞれの業務内容】

D:演出や企画を考える

AD:リサーチ、仕込みを行う

AP:キャスティング(タレントを仕込む)

P:キャスティング&トータルの確認

作家:台本作成・リサーチやネタ出し

【ロケハン】放送まで残り35日(収録まで15日・ロケまで残り5日)

リサーチや仕込みと並行して、ロケハンを行います。良さそうな候補地を下見して、最終的に確定していきます。

大体ロケ1週間を切ってから、ロケハンなどをするので、企業やロケ地も急な連絡でビックリしますが、こんなスケジュールで動いています。

台本を想定しながら、現場の動きや、撮影場所の確認、施設側とのすり合わせなど細かく行います。

【ロケハンでココは確認しよう!】

・ロケバスや車両の駐車場所の確認

・演者控室の有無

・照明が必要の可能性

・ロケ終わりのゴミ処理方法(キャンプ等の場合)

【ロケ】放送まで残り30日(スタジオ収録まで10日)

いよいよ番組制作の一つの山であるロケです。数十日、長い場合は数ヶ月も準備したことをやっと形にしていきます。

ADは基本前日から泊まり込みでロケ準備するので、ほぼ100%家に帰れません。

ロケ前日のADのスケジュールを詳しく書いている記事もあるので、ぜひそちらを読んでみてください。

ADのロケ前日スケジュール

ちなみに連日睡眠不足ですが、タレントさんや大勢の方が集まるので、アドレナリンが出てロケではあまり眠くはならないです。

さあロケが終わってもまだまだOAまでの過酷の道のりは続きます。

【オフライン編集】放送まで残り29日(収録まで9日・箱まで6日)

ロケが終わっても、まだまだ過酷な時間は続きます。それが、オフライン編集です。

まさにオフラインこそがディレクターの本番になります!

ロケした素材を編集して、数分〜数十分のVTRにしていきます。この作業をするために、ADはロケ終わりにデジタイズ・段積みを速攻やらないといけません。

段積みについて解説している記事もありますので、ぜひこちらからチェック!

何十時間、何百時間とあるロケ素材を確認し、数分の面白いVTRに仕上げていきます。このオフライン編集も総合演出のチェックがあります。それがPV(オフチェック)になります。

このPVに合わせて編集をしなければいけないので、ディレクターは寝ずに24時間以上作業することも当たり前です。

【PV・オフチェック】放送まで残り25日(収録まで5日・箱まで2日)

VTRが完成したら総合演出にチェックしてもらいます。

ディレクターが一番緊張する瞬間ですし、アシスタントディレクターもプロデューサーも気合いの入る現場です。番組によって、チーフ作家さんが総合演出と一緒にチェックする場合もあります。

VTRを頭からケツまで全員でじっと見て、修正箇所や構成について総合演出から伝えられます。

【PVのイメージ】

「頭でナレーションと扉をつけて目線つけようか!」

「見るモチベーションが欲しいな」

「このトークはカットして、前の話を膨らませて」

「他におすすめグッズとか使ってないの?」

など細かい修正箇所や構成の直しを言われて、オフライン修正をしていきます。直しが少ない場合はこれでPVは終了してEED(箱での編集)に移ります。

ただここでVTRの編集が酷いと大変なことになります。俗に言う大工事です。

何日をもかけてオフラインしていたものが、白紙に戻り構成から丸っと変わったらもう地獄です。ただでさえ寝れていない中で、次のPVまで大至急修正をして動くので、寝れない帰れない確定です。

だいたい2回程度でPV(チェック)が終わりますが、大工事の場合は5〜6回と果てしなく続くことも・・・

【サブ出し EED・MA】放送まで残り23日(スタジオ収録まで2日)

オフライン編集が終わったら、テロップ入れやモザイク、写真の加工のなどの編集作業を箱(編集所)で行っています。

VTRの尺によって作業時間は変わり、短くても6時間、長ければ30時間くらい編集作業していきます。

今回の想定は、朝10時に入ってEED終了するのが、日付変わって翌日16時くらいですね。30時間くらいになります。

基本これくらい時間がかかりますし、長ければ3日以上かかる編集もあります。

箱に入ったタイミングで順調にきていれば、MAまで少し休めます。

EEDが終わったら、音をつけていくMAになります。ナレーションを撮ったり、SEやBGMをつけて、MAが終わればサブ出しVTR完成です。

大体サブ出し編集の場合は1日〜1日半、MA1日かかります。基本ADは編集所に泊まりで、編集の作業の裏で、スタジオのカンペや備品、美術小道具の準備をしてます。サブ出しVTRが完成したら、いよいよ収録本番です。

【スタジオ収録・サブ出し】放送まで残り20日

やっと収録まで辿り着きました。企画会議・リサーチ・ロケ・編集と怒涛の約一ヶ月半を乗り越えてきて、放送まであと一踏ん張りです。

スタジオ収録では、カンペの準備、小道具のスタンバイ、各種調整を行います。

自分が担当したVTRでスタジオが爆笑しているとめちゃくちゃ嬉しくなります。ここまでの苦労が吹っ飛びます!

そしてスタジオ収録が終われば、⑦〜⑨と同じようなことを行いますが、ディレクターの上の演出ディレクターが編集をします。

ディレクターと演出ディレクターの違いを説明した記事もありますので、読んでみてください。

【一本化編集】放送まで残り14日

ロケ終わりと同様に、まずはADがデジタイズや段積みをしながら、演出ディレクターがHDDを欲しい日までに用意します。OA日まで余裕があれば多少休めます。

ここからが最後の山場の一本化編集になります。

一本化とは「ロケVTR」と「スタジオ収録」を合体させてOA尺に編集していく作業になります。1時間番組ならCMなどと抜き、実尺45分程度になります。

実際に放送される編集になるので、サブ出しよりもクオリティや構成がシビアになります。

演出ディレクターはスタジオ素材とサブ出し素材という膨大な素材をくまなく確認・編集しながら、必要なインサート素材や情報をADに指示していきます。

【一本化で言われるあるある】

・スタジオで話してた商品のスチール借りて!

・サブ出しのこの情報って正しい?エビデンスある?

・グルメインサート撮り直そう!美味しく見えない!

・盛岡市の綺麗なドローン映像借りれないかな?

など追加素材と情報確認がADに怒涛の勢いで飛んできます。

オフラインしている時には指示はこないで、PVの時に言われるケースもあり、タイミングは演出ディレクター次第になりますが、早め早めに言ってくれるとADは嬉しいですね。

【PV・オフチェック】放送まで残り9日

ロケと同様に、総合演出にVTRチェックしてもらいます。一本化のPV(オフチェック)は業界に何年いても常に緊張感のある現場です。

総合演出・チーフ作家から直しをどんどん言われていきます。

「アバンにもっとロケ入れて欲しいな」

「スタジオのテンポ悪いから上げて欲しい」

「CM入りはあのトークで入りましょう」

大枠の修正から、番組全体の構成まで細かく修正箇所を言われます。一本化PVの場合、VTRを見る時間も含めて2時間くらいはかかります。

PVがうまくいけば、修正箇所を直し、細かいクオリティを上げ、OA尺を詰めていきます。そして修正し、仕上げた一本化を再度総合演出に確認してもらいOKを貰えば、EED(箱)に向かいます。

一本化オフラインもロケと同じく、上手くいかないと地獄になります。放送まで残り時間も短く、OAされる編集になるので一切に妥協はできません。

編集も遅れ、情報確認や追撮が溢れてパニック状態になりますが、誰しも一度は絶対に経験することですので、悲観しないでください(笑)

【一本化 EED・MA】放送まで残り4日

ここが終わればもうほぼゴールです!

1時間の番組の編集だとEEDで約2〜3日(72時間)、MAで1日(24時間)が少なくても必要になります。

テロップや加工だけでなく、VTRを見ているワイプ、画面上についているサイドテロップを入れたりと24時間では終わることはありません。

基本チーフADはずっと箱にいる可能性が高く、PVから合わせて1週間以上家に帰れないことも普通になります。

昔から「箱に住む」なんて言います笑

ここでのADの作業は、必要な素材を入れ込んだり、情報テロップの確認など細心の注意を払って編集に臨みます。

ここで注意したいのは、尺になっているか問題です。

尺になっていて、箱の編集中に総合演出から直しが来る場合は覚悟しておきましょう。

大きい尺変更が起こると、バタバタとなります。演出はオフライン、ADは箱の調整を指示します。

ここで段取り良く箱を回せるチーフADは「出来るな!」と一目置かれます!

いよいよEEDが終わればMAです。ナレーションを撮って、SE、BGMをつけて編集ほぼ終了になります。

【MIX・試写】放送まで残り24時間

最後にMIX・試写という完成した放送テープを全員で最終確認をします。

誤字脱字・情報の確認など細かいチェックをしていきます。基本的に尺に関わらないワイプの修正や、インサート直し、SEタイミング等、総合演出から細かい直しがあります。

そして修正をして納品用テープに書き出して編集終了になります。

編集・MAまで丸4日(96時間)の激闘も終わりです!

【テレビ局に納品】放送まで残り12時間

完成した納品用テープをテレビ局に搬入して終了になります!

お疲れ様でした!!!

この一連の流れがテレビ番組の出来るまでになります。

いやー長かった!!!

テレビ番組が出来るまでを書きながら、納品した時の一気に解放される当時の気持ちを思い出しました。

基本的な流れはこのような形で、放送日や収録日までの日数によって過酷さは大きく異なります。1日でオフラインしないといけない場合と、2週間くらい余裕がある時など状況は毎回変わります。

企画会議から納品までひとつのOAが終わっても、次の放送日に向けてまた企画会議が始まります。これ流れを繰り返すのがテレビ番組制作になります。

余裕があれば休めますし、余裕がなかったり、掛け持ちをしているとすぐに動かなければいけないこともあり、常に休めない状況になります。ただ番組や制作会社によって異なりますし、シフト制を導入したり、しっかりと休める環境は整ってきています。

読んでいても過酷で大変な番組制作ですが、辛いよりも楽しさや他では味わえない経験をたくさん出来ると思っています。

番組制作という裏方になりますが、芸能界という煌びやかな世界の中にいるので、夢や可能性は無限大に広がっています。

きっとこれを読んでくれている方は、これから番組制作や映像制作を目指す学生さんが多いと思います。

そんな皆さんの今後の進路や就職活動の参考や、ちょっとした悩みや不安の手助けになれたら嬉しくこのようなサイトを立ち上げました。純粋にテレビ制作の裏側に興味を持っていただいて読んでくれた方もとても嬉しいです。

今後もテレビ制作の裏側やノウハウ情報をどんどん発信していき、伝えきれず言語化されていない情報をまとめていきたいと思います。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今後ともテレビ制作大百科をよろしくお願いいたします。