昨今、テレビ番組制作者の傲慢・横柄な態度がSNSなどで話題になっています。

テレビ制作にいた身として、とても悲しく辛い気持ちになります。

以前より「番組取材に対する嫌悪感」は少なからずありましたが、SNSの普及によりテレビ制作に対するネガティブなイメージはより可視化されてきました。

話題になるような横柄な番組制作者は多くはありません。

私自身、ネットで見るようなヤバい制作者には会ったことも見たこともないです。

しかし残念なことに、テレビ制作に対するネガティブなニュースはなくなりません。

なぜテレビ業界では、傲慢で横柄な態度が残り続けてしまうのか?

ここでは現状のテレビ業界の状況を整理しながら、番組制作で培った経験をもとに「ロケ仕込みマニュアル」を書いていきます。

現在のテレビ業界の教育環境を少しでも是正し、業界全体が良い方向に進む一助になれたらと思い、ADの教育ノウハウを言語化してみました。

テレビ局の皆様、番組制作会社の皆様、映像制作の皆様、インフルエンサーの皆様、AD教育の教科書としてぜひご活用ください。

テレビ業界の悪い教育環境

テレビ業界で、傲慢で横柄な態度が繰り返されるのは教育環境が整っていないからです。

AD(アシスタントディレクター)に言語化された教育環境は全くありません。

一般的社会人としての「ビジネスマナー・礼節・モラル」など基本的な研修が1日程度あるのみで、番組制作者としての研修はほぼありません。

入社したら即座に番組制作の仕事がスタートし、テレビ制作のイロハを教わらず「現場で学べ!」が今も業界全体の教育環境になっています。

教科書やマニュアルなど全く存在しません。

とりあえず取材先に電話しておいて

どうすればいいの?

先輩ADも過酷な現場なので、新人ADに教育している暇がありません。

むしろ教えるのが不可能な状況でもあります。

テレビ業界が70年以上培ってきた経験・知識が受け継がれることなく、常に配属された現場や先輩ADの教育体制に依存された環境が常に続いています。

何も知らないADは横柄な態度を見て育てば、それがテレビ業界の当たり前に思ってしまい、業界の悪い状況が永遠続いているのです。

広報が困る”番組制作者”とは?

私は、番組制作者として、さらにはロケ地検索サイトの運営者として、これまで500人以上の広報さんとお話をさせていただきました。

その中で、予想以上に取材やロケを通して、番組制作や映像制作に悪いイメージを抱いている企業さんやロケ地が多いことを知りました。

多くの広報さんが困っていたのは「連絡・返信がない」「傲慢な態度」「注意事項を守らない」といった社会人としての当たり前の礼儀やマナーでした。

重要な確認事項を連絡しても返信しないくせに、「あれして!」「これして!」と要求するだけする制作スタッフは最低です。

守るべき仕込み&バラシのルール

問い合わせをしたら必ず返信する

複数の企業に問い合わせをしているのに、取材する企業だけに返信しがち。問い合わせした企業には、全て返信するのが社会人としてマナーです!

バラシ(お断り)の連絡を忘れない

企業は取材の有無を期待して待っています。バラす場合は迅速に忘れずに連絡してください。その際、対応してくれた感謝も伝えると好印象です!

謙虚な姿勢で対応する

取材をさせてもらう姿勢で対応しましょう。企業は、わざわざ時間を割いて取材に応じてくれています。横柄な態度は業界全体の悪です!

多くの企業やロケ地は番組・メディアに取材して欲しいと思っています。

しかし、メディアと企業には上下関係は存在しません。

協力してくださる方々がいて、初めてロケ・取材が成立することを忘れないでください。

テレビだから、メディアだから特別ではなく、しっかりと社会人としての当たり前の礼儀やマナーを守ることが大切でおり、しっかりと連絡するだけ良い関係が保つことができるはずです。

社内共有と上長への相談

AD・Dだけが情報管理するのではなくチーム全体共有しましょう。

企画会議・仕込み・ロケ・編集・収録・本編と休みなく続く、ADさん、ディレクターさんだけに全てを任せるのはもう時代遅れだと思います。

P・APにも注意事項の共有

企業からの注意事項をAD・ディレクターのみで共有せずに、P・APにもメールなど文章で共有し、チームで管理していくことでトラブル回避に繋がります。

不明な部分はすぐ確認

忘れてしまいあやふやな事があればすぐに企業に確認しましょう。気になる事は迷わず連絡するようにしましょう。放送・配信後に気づいても遅い!

企業・ロケ地のルールを守る

打ち合わせで聞いたルールはちゃんと守りましょう。NGな事は事前にチーム全体に共有するようにしましょう。面白いからOKではありません!

ADは疲弊することで、企業としっかりと向き合う事ができず、テキトーな対応になってしまいがちです。そしてトラブルが起こり、テレビ業界のイメージが悪くなる原因の一つにもなっていると考えます。

これからのテレビ業界を守るために、トラブルを未然に防ぐ「制作会社・番組全体で情報を把握する環境」を整えることが大切になります。

マニュアルを製作した理由

ADに十分な教育時間を確保するのが難しい番組制作の環境は、身に染みて理解しています。従来の「やって覚える」「正しいかわからないまま」「教育マニュアルがない」「言語化されていない」といった課題が長年あったと思っています。時間がない中でも、最低限守るべき仕込みのルールやマナーの言語化されたマニュアルが番組制作全体のAD教育に繋がることを期待しています。

テレビ番組制作への印象を変えたい

ロケ地検索サイトを立ち上げて、より多くの企業や広報さんとお話しする機会が増えました。その中で、想像以上にテレビ制作者への悪い印象を持っている方が多いことに驚きました。企業が伝えにくかった番組制作者に直して欲しい声を届けることで、少しでも業界全体が良い方向に進む手助けになりたかった。

まとめ

もっとテレビが良くなるために、素晴らしい映像を届けられるように

テレビ離れや視聴率の低下と言われる時代になっても、多くの企業はテレビや作品のパワーや可能性をちゃんと知ってくれて、求めています。だから、多少無理してでも協力してくれたり、時間を割いて対応してくれる企業さん、広報さんがたくさんいらっしゃいます。

ほとんどの番組制作者さん、映像制作者さんは「取材を受けてもらえるのが当たり前!」と微塵も思っておらず、真摯に企業に向き合っています。

しかし、たった1人の誰かの行動で業界全体イメージが崩れていきます。

素晴らしいテレビや作品を作り続けるための、企業と信頼し合える関係を築けるように、「ロケ仕込みマニュアル」がほんの少しでも番組制作や映像制作に貢献できれば嬉しく思います。